性器ヘルペスについて

性器ヘルペスについて

性器ヘルペスとは?

性感染症(STD)は、性行為の経験がある方であればだれでも感染する可能性のある病気です。
性器ヘルペスは、皮膚や粘膜などにできた目に見えないほどの小さな傷から感染します。そのため性的パートナーが多いほど感染リスクが高まります。年齢別にみると性的活動が盛んな20代以降での発症が多くなっています。特に女性は、性行為時の摩擦により膣内の粘膜に微細な傷ができやすいため、男性よりも感染リスクが高く、感染者数も男性より多くなっています。

潜伏期間:感染してから症状が出るまでの期間 : 2日~10日

男性より症状が重いことが多く、強い痛みと発熱により排尿困難・歩行困難になることがあります。

ヘルペスの症状

  • 足の付け根(鼠径部)のリンパ節の腫れ、圧痛がある
  • 高熱がでる
  • 陰部に水疱が多数でき、かゆい
  • 陰部に潰瘍ができ、痛みがある
  • 排尿時に強い痛みがある

治療を行わなくても2~3週で症状は消えますが、1度感染するとウイルスを完全に排除できないため、免疫力が低下した時など、症状が治まっても、心身の疲労、月経、性交その他の刺激が誘因となって再発を繰り返します。再発した際の症状はほとんどの場合、最初に症状が出たときよりは軽いものです。

病原体は、単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus : HSV)で、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)と単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)があります。

HSV-1は、主に口の周りに感染し口腔ヘルペスの原因となります。口と口との接触、唾液、感染した皮膚表面との接触により感染を引き起こしますが、性器にも伝播し口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こします。

HSV-2は、主に性交渉時に性器の表面、感染した皮膚、体液との接触によって伝播します。

HSV-1、HSV-2共に、症状がない状態でも感染源になることがありますが、症状がある状態はより感染を拡げやすい状態になります。また、分娩時の産道感染で母子感染することがあります。
普段の生活で感染するリスクはどれくらいかというと、手をつなぐ、会話をするなどの日常生活の中ではヘルペスウイルスは感染することはありません。
性器ヘルペスがある方と同じお風呂に入っても感染することはありませんが、同じバスタオルを使用したり、お尻に症状がある方が使った便座を使用すると感染のリスクはあります。

治療方法

① 初発例の治療

1) バラシクロビル錠(バルトレックス®500㎎)1回1錠1日2回を5~10日間。
2) ファムシクロビル錠(ファムビル®250㎎)1回1錠1日3回を5~10日間。
3) アシクロビル錠(ゾビラックス®200㎎)1回1錠1日5回を5~10日間。
※アシクロビルの経口吸収率は20%で、バラシクロビルの80%に比べて低く、そのため1日の服用回数が増えてしまいます。服用回数の少ないバラシクロビルによる治療が第一選択です。ちなみに、この3つの薬剤は1日の服用回数が異なるだけで、治療効果は同程度です。
私の場合、将来の再発頻度に影響する初感染初発の治療は、バラシクロビルを1日2回10日間でガッツリと治療するようにしています。また、痛みの強い患者さんには、鎮痛剤も併用します。

② 初発時の高熱による衰弱、歩行困難、排尿困難などの重症の場合

・注射用アシクロビル5㎎/kg/回を1日3回、8時間ごとに1時間かけて7~10日間点滴します。ひどい時は入院が必要です。

③ 再発例の治療①の薬剤のいずれかを5日間服用。

※再発例は発症してから24時間以内に服用を開始しないと効果が得られません。また、局所の違和感や神経痛様の痛みなどの「前駆症状」のときに服用することで、病変の出現を予防できることもあり、あらかじめ薬を携帯しておき、早めに服用することをお勧めします。
※抗ヘルペス薬の軟膏は、皮膚の表面にいるウイルスにしか働かず、ウイルスの活動を完全に抑制することはできないので、症状の出る期間を短縮する効果は無いと言われています。

★待機的再発抑制療法

<健康保険の適応となる患者さん>
再発頻度が1年に3回以上で、再発の初期症状(ピリピリ・ムズムズなどの前駆症状)を正確に判断できる方。
<治療方法>
ファムシクロビル(ファムビル®)を初期症状発現後すぐ(6時間以内)に4錠服用(1回目)し、1回目の服用から12時間後に4錠服用(2回目)で完結します。この治療の特徴は、再発の早い段階のときに患者さんの自己判断で2回内服するだけで治療できる点です。この治療により、病変部位が治癒するまでの期間、ウイルスが消失するまでの期間、完全痂疲化までの期間が早まります。
服用を終えたら、次回の再発時用に処方をしてもらいます。次の再発の前兆を感じたらすぐに服用できるように、いつも携帯しておくと安心です。

★再発抑制療法

<健康保険の適応となる患者さん>
再発頻度が年6回以上の方。
<治療方法>
バラシクロビル(バルトレックス®)500mg 1日1錠ずつを毎日1年間服用する方法です。1年間服用した後、休薬します。
休薬期間中に再発が起こるかどうかによって、再発抑制療法の再開について検討します。
この再発抑制療法により、60~70%の患者さんでは再発リスクを抑制でき、40%の患者さんは1年間に一度も再発しなかったという報告があります。しかし、もともと年10回以上再発があった方は、抑制療法中でも再発することがありますが、症状は軽度で済みます。
その場合は、バラシクロビルを1日2回5日間まで一時的に増量します。
また、抗ヘルペス薬の長期間服用による副作用や耐性化はほとんど無いので、安全に服用できます。

予防

ヘルペスは、主にストレスや疲労、睡眠不足、発熱などが再発のきっかけになります。
以下の点に気を付けて再発しないよう日頃から気をつけておきましょう。

① 疲労をためない
② 過度な飲酒
③ 日焼けに注意
④ 睡眠はしっかりとる
⑤ 適度な運動
⑥ ストレスをためない
⑦ 性行為の場合には必ずコンドームを着用する

間違えられやすい病気

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。
水ぼうそうにかかったときのウイルスが身体の中に残り、何らかの原因によって 身体の中で増殖して皮膚に感染して発症します。
主な症状は、痛み、痛痒さ、水疱などで、後遺症として帯状疱疹後神経痛を患うこともあります。単純ヘルペスとは症状が似ていますが、異なる病気です。
帯状疱疹と単純ヘルペスは、症状が似ている場合もありますが別の病気であり、原因となるヘルペスウイルスの種類も違います。
同じヘルペスウイルスのなかでも、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症する病気は水ぼうそうと帯状疱疹ですが、単純ヘルペスウイルスによって起こる病気が単純ヘルペスです。
唇の水ぶくれなどに代表される単純ヘルペスは、一度かかると何度も再発を繰り返すこともある病気です。

 

ゆかりレディースクリニック

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