ピル
ピルで卵巣がんを予防する|排卵のストレスが卵巣がんの原因となる
- 2017.08.20
女性がピルを使うときは、避妊のイメージが強いと思いますが、2008年に発表されたある研究データからピルの使用は卵巣がんを予防するということが発表されました。
実際先進国の中でも、ピルの使用率が低い日本は、年々卵巣がんが増加傾向にあります。
このひとつの原因として考えられているのがピルの普及率の低さです。今後のことを考えるとピルを服用することで卵巣がんを予防できるかもしれません。
今回は、ピルと卵巣がんの関係についてお伝えしていきたいと思います。
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卵巣がんの原因とは?
そもそもなぜ卵巣がんになってしまうのでしょうか?
主に2つの原因があると思ってもらえばいいのではないでしょうか。
- 排卵によるストレス
- 子宮内膜症の一部が原因
この2つが主な原因として考えることで、ピルの存在の重要性とつながってくると思います。
排卵によるストレスが原因で卵巣がんになる?
私たち女性は、28日周期で月経が起こる、排卵するなど女性特有の機能を持っています。
実は、この排卵時のストレスが原因で卵巣がんになる可能性を高めるという考え方があります。
先進国の中で年々卵巣がんの発症率が低下している国が多い中、日本は唯一といっていいほど卵巣がんの発症率が上昇し続けています。
この原因のひとつにピルの普及率があげられています。
先進国の中には、女性の約70%がピルを服用している国がある一方、日本は約2%と極端に低く、避妊薬としての認識が強く、その他の効果や効能についてあまり知られていないのが現状だと思います。
■避妊以外の使い方があるって知ってた?ピルの使い方と効果について
ピルを服用することで、排卵を抑えることができ、排卵時のストレスを軽減できます。それが卵巣がんの予防になるのではと考えられ、ピルの普及率と卵巣がんの発症率の関係にあるのではないかと考えられています。
ピルによる卵巣がんの発症抑制効果
2008年、国際的な学術論文誌Lancet (Vol. 371 january 26 2008 )に、避妊薬ピルを長期間服用することで卵巣がんの発生が半減するという研究結果が発表されました。
ピルを服用することで、卵巣がんの発症抑制効果は長期間服用するほど顕著となり、
- 5年継続で約3割
- 10年継続で約4割
- 15年継続で約5割
卵巣がんになる可能性を抑える効果があると示されました。
がんナビより引用:ピルで卵巣がんを予防する
このようなデータから考えられることは、ピルを服用することで卵巣がんを予防する効果があるということがわかります。
戦前と現代女性の月経回数の違い
ピルの服用が卵巣がんの発症率と関係があると考えることができるとお伝えしてきましたが、近年女性の月経数は非常に多くなっています。
戦前の女性は子供を多く出産しており、10人を超える子供産んでいる方もいました。
このとき女性が初潮から閉経までの期間で起こる月経回数は、約35~40回程度と言われています。
ただ、現代女性はなんとこれの10倍の約400回と言われています。
月経数が多くなるということは、当然排卵する機会もそれだけ多くなりますし、これだけでも昔と比べて卵巣がんの発症率が高まる理由もわかる気がします。
さらに問題になるのが、月経回数が増えてしまうと子宮内膜症にもなりやすくなってしまいます。この子宮内膜症の一部が卵巣がんになる危険性もあり、排卵のストレスだけではなく、子宮内膜症の一部も卵巣がんの原因のひとつして考えられています。
チョコレート嚢胞と卵巣がんの関係について
チョコレート嚢胞とは、正式には卵巣チョコレート嚢胞といい、卵巣の内部に発生する子宮内膜症です。
この名前の由来は、卵巣の内部に嚢胞ができ、その中に古くなった子宮内膜や月経血が溜まります。
ここに溜まったものがチョコレートのようなものであることから、チョコレート嚢胞といわれるようになりました。
上記でお伝えした研究で、チョコレート嚢胞があった女性の数は6398人でした。そのうち46人が卵巣がんを発症したそうです。
発症率は約1%と一見、非常に低く見えますが、卵巣がんを発症する女性の割合は5000~10000人に一人と言われています。約0.01%。
卵巣がんを発症する確率を見ると、チョコレート嚢胞がある場合は、何もない方の約100倍になっており、冷静に見るとチョコレート嚢胞ができることで非常に卵巣がんのリスクは高まってしまうということになります。
このチョコレート嚢胞自体が卵巣がんになる可能性があるため、放っておけない存在となります。
子宮内膜症を放置することは勧められない
卵巣の内部に子宮内膜症ができることでチョコレート嚢胞ができる。結果卵巣がんのリスクが高まるとお伝えしましたが、一般的に子宮内膜症は閉経と共に治ると言われています。
それは見方としては間違っていないと思いますが、ただ知っておかなければいけないのは、チョコレート嚢胞が卵巣がんになる可能性があり、発症するまでには長い年月がかかります。
数年から数十年単位だともいわれていますが、チョコレート嚢胞中には血液由来の鉄イオンが溜まっています。
みなさんのわかりやすい例だと、鉄は長期間放っておくと徐々にさびてくることはイメージしやすいと思います。これが酸化と言われるものです。
最初はピカピカでも時間をかけて徐々にボロボロになりさびていく。チョコレート嚢胞も同じことが言えて、長期間酸化ストレスを受け続けることで数年、数十年後に錆びきって結果卵巣がんになる可能性があります。
だからこそ閉経を迎えれば治ると言われる子宮内膜症も、放置するリスクはここにあります。
もしかすると「あと数年で閉経を迎えるだろうから治療しなくてもいいかな。」と考えている方もいるかもしれません。それもいいと思いますが、卵巣がんの発症を考えるとできるだけ早く治療することをお勧めしたいと思います。
まとめ
今回は、ピルの服用と卵巣がんの関係についてお伝えしていきましたが、いかがでしたでしょうか?
ここまでお伝えした内容をまとめると以下のようになります。
- 排卵時のストレスが卵巣がんの発症率を高める
- 現代女性は戦前と比べて月経回数が10倍になり、初潮から閉経まで約400回起こる
- 月経回数の増加は子宮内膜症になる可能性を高める
- 卵巣の内部にできる子宮内膜症、チョコレート嚢胞は卵巣がんになる可能性がある
- ピルを服用することで、月経回数を抑えられ子宮内膜症のリスクも下げる
- 排卵回数も抑えられることで、結果卵巣がんの予防につながる
このような内容をお送りしました。
卵巣がんの予防という点でもピルの服用をおすすめしたいですし、以前もお伝えしていますが、ピルの効果は避妊だけではなく、さまざまな効果があるということを知っていただきたいと思います。
今回の内容が、将来の卵巣がんになる方の予防につながればうれしく思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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