生理
生理痛がひどい原因とは?|月経困難症という病気の可能性がある
- 2017.08.12
生理中にお腹が痛む、身体がむくむ、食欲が増したり、精神的に不安定になったり。
これはひとつの個性というか、自分の特徴だと思って毎月何とかこの症状に耐えているという方は、もしかすると月経困難症の疑いがあります。
この症状は、ホルモン剤や漢方薬、IUSという黄体ホルモンを放出する小さな器具を装着することで治療することができるかもしれません。
毎月生理痛や精神的に悩まされている方は、ぜひご自身の症状と照らし合わせながら読み進めていただきたいと思います。
こちらの記事も参考にしていただければと思います。
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毎月生理痛や精神的な不安さに悩んでいる方へ
女性は小学生頃から閉経を迎える5~60代まで毎月1回生理がくるため、そのたびに痛みを経験したり、出血があるため普段とは違う生活を余儀なくされます。
男性にはわからない苦労があり、もし身体の機能が変わらないのであればできれば生理がなくなったらいいのに・・・と思う方も多いと思います。
ただ、女性にって大切な役割があるかたこそ毎月生理はくるわけで、それを閉経を迎えるまで経験しなければいけません。
だからこそ少しでも痛みが少なく、身体の不調も小さい方がいい。そう思いますよね。
そんな生理ですが、身体にはさまざまな変化を及ぼします。これらはすべて生理がきっかけで起こる症状です。
お腹の痛み
お腹が痛すぎて仕事にもいけないし、動けない。そんな経験をしている方もいると思います。
お腹がちぎれそうなぐらい痛み、身体を丸めてそこからちょっとでも動くと、ズキン!と痛む。これは本当につらいですよね。
生理によってこういったお腹の痛みで悩んでいる方もいると思います。
腰痛
子宮筋腫や子宮内膜症になると、生理中にお腹だけではなく腰に強い痛みが出ることがあります。
イライラやうつ状態
月経前症候群(PMS)という症状があり、生理前に精神的に不安定になってしまったり、イライラしてしまう症状のことをいいます。
2011年に15~49歳までの約20万人の女性を対象に行われたインターネット調査では、こういった症状に約7割以上の女性が悩んでいるそうです。
こういった症状に悩まされている方は、もしかすると月経困難症という病気の可能性があります。
月経困難症とは、どのような病気なのでしょうか?
月経困難症とは?
月経困難症とは、2つのタイプがあり、機能性月経困難症と器質性月経困難症に分けられます。
それぞれはどのような病気なのでしょうか?
機能性月経困難症とは?
機能性月経困難症とは、子宮や卵巣に病気がないにも関わらず上記の症状が現れるものを指します。
病気ではないのに、なぜ痛みが出たりするのでしょうか?
それは、生理中に子宮内膜から痛みの物質である“プロスタグランジン”などが作られ、それが痛みのもととなっています。
このように病気ではないけども、生理中に痛みが強く出るなどの症状を機能性月経困難症といいます。
器質性月経困難症とは?
器質性月経困難症とは、子宮などが病気になり、その病気が原因で痛みなどの症状を引き起こしていることを器質性月経困難症といいます。
子宮の病気は、
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
などの病気があります。
子宮内膜症
子宮内膜症とは?
子宮の内側をおおっている内膜、または、それに似た組織が、何らかの原因で本来あるべき子宮の内側以外の場所にできる病気です。
子宮内膜は、生理のたびに増殖し、はがれて出血しますが、別の場所にできた内膜組織も、同じように生理のたびにはがれて出血します。
子宮内膜ではがれた組織や血液は、膣から外に出て生理となりますが、それ以外の病巣では組織や血液が外に出ていかないことから、周囲の組織への炎症や癒着などを引き起こし、痛みなどの症状が発生したり、不妊症の原因になったりします。
20〜30代の女性に発症することが多く、ピークは30〜34歳といわれています。
子宮内膜症が起こる原因ははっきり分かっておらず、生理のある女性なら、だれでも子宮内膜症になる可能性があります。
特に、少しでも生理痛がある人は全員、子宮内膜症の危険因子をもっているといえます。
ホームページより引用:子宮内膜症
子宮筋腫
子宮筋腫とは?
子宮の筋肉の一部に、硬いコブのような潰瘍ができる病気です。ほとんどは良性の潰瘍ですが、まれに肉腫などの悪性の変化を伴う場合があります。
子宮筋腫は良性の潰瘍ですから、それ自体が生命を脅かすものではありません。実際に自覚症状がなく、子宮筋腫に気づかずに過ごしている人も多く、40歳以上の女性では、4人に1人が筋腫をもっているといわれています。
それほど、多くの人がかかる病気でありながら、原因ははっきりとは分かっていません。
ホームページより引用:子宮筋腫
子宮腺筋症
子宮腺筋症とは?
子宮筋層の中で子宮内膜組織ができる病気です。
子宮筋層の中にできた組織が、月経のたびに増殖と剥離を繰り返し、病気が進むにつれて子宮筋層が厚くなります。
それにより月経痛、経血量の増加、出血持続日数の延長などが現れます。
このように、さまざまな子宮などの病気が原因でお腹の痛みや腰痛などが起こることを、器質性月経困難症といいます。
PMS(月経前症候群)とPMDD(月経前不快気分障害)
ここまでお伝えしてきた月経困難症というのは、生理中の痛みなどのことを指していましたが、生理前にイライラや身体の不調などが起こるものをPMS(月経前症候群)といいます。
そして、精神的な症状がさらに強いものをPMDD(月経前不快気分障害)といいます。
月経周期について
生理が始まり、次の生理が始まる前日までを1つのサイクルとして考え、基本的にはそれが28日サイクルだと言われています。
この28日の中にも、いろんな期間があります。
1~4日目 | 月経 |
7~11日目 | 卵胞期 |
15日前後 | 排卵 |
17日目~28日目 | 黄体期 |
※この期間はひとつの目安であり、個人によって異なります。
PMSなどは黄体期に起こる
患者様の中にも、PMSで悩まれている方がいますが、これは年齢が高い方よりも10~20代の方に多く、月経1週間前になるとイライラしてきたり、やる気がなくなったりしてくるので、月経前になったとすぐにわかるそうです。
PMSの症状は、黄体期に起こりますので、あまりに症状がひどい方は、月経前後に仕事や学校に行けない程、不安定になってしまう方もいます。
ここまでなってしまうと、将来的にも不安が大きくなりますし、1人暮らしをされている方は、そうそう簡単に仕事も休めませんよね。
このPMSの症状が現れる時期、28日サイクルの中の17日目~28日目あたりの期間が黄体期になります。
PMSやPMDDの主な症状
PMS | PMDD |
身体の症状
精神的な症状
| 精神的な症状
|
※米国婦人科学会および米国精神科学会DSM-IV-TRより作成
このような症状が黄体期に現れるとPMSやPMDDの疑いがありますので、「もしかすると・・・?」と思った方は、お近くのクリニックで診てもらうことをおすすめします。
PMSの後に月経困難症が続くことが多い
ここまでなぜPMSのことに触れたかというと、PMSの後に月経困難症が続くことが多いんですね。
生理前にイライラしている、精神的に不安定な方ほど、いざ生理が始まると激しい腹痛に悩まされたり、身体の疲労感、倦怠感が異常に高くなってしまうことがあります。
このような流れに対して、身に覚えがある方は、治療できることだということを知っていただきたいなと思います。
月経困難症の治療法
月経困難症を治療するためには、主に4つの薬物療法を用います。
- 痛み止め
- 経口ホルモン剤
- 漢方薬
- IUS
これをひとつひとつご紹介したいと思います。
OC(低用量のピル)
一般的にピルのイメージは、避妊というイメージが強いと思います。
実際は、避妊だけではなくさまざまな効能があり、痛みの物質であるプロスタグランジンの過剰な産生を抑える働きがあります。
痛み止め
これはあくまでも一時的な作用になりますが、即効性がある薬です。それが、非ステロイド抗炎症薬(アスピリン、イブプロフェンなど)です。
この薬は、強い痛みに効き目が弱く、強い痛みになってしまう前の軽い痛みのときに服用することが効果的です。
経口ホルモン剤
経口ホルモン剤の中には、卵胞ホルモン、黄体ホルモンと言われる2つの女性ホルモンを含むEP配合剤と呼ばれる薬があります。
EP配合剤は避妊、月経困難症の治療など様々な目的で使用されています。欧米ではEP配合剤が月経困難症治療の第一選択薬として使用されています。
漢方薬
月経困難症には、症状や体質に応じて当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸などが使われます。
漢方は個人によって使い方が異なるので、漢方の専門医の診察を受けるといいと思います。
漢方は、即効性はありませんが約1~3ヶ月のみ続けると、症状の改善が期待できると言われています。
IUS
子宮内に黄体ホルモンを放出する小さな器具を装着する方法です。
これは、先ほど機能性月経困難症のところでお伝えした、痛み物質であるプロスタグランジンなどの産生を減少させることで生理痛などを軽減します。
このIUSは、本来避妊目的で開発されましたが、近年になって月経困難症や経血量が病的に多い過多月経のの治療にも利用できるようになりました。
ただ、出産経験がない女性に対しては、ホルモン剤の投与や漢方薬など他の方法が優先されます。
このように月経困難症の薬物療法についてはこれらで対応することが多くなっています。ただ、症状などを見て、個人によって対応を変化させるのでこの通りにならないこともありますが、ひとつの参考としてご覧いただければと思います。
月経困難症の疑いがある方へお伝えしたいこと
ここまで月経困難症とは何か、そしてどのように治療するのかなどをお伝えしてきました。
人の身体は一人違い、診察をしていても個人の身体を見ながら細かいことを変化させることが大事だということを痛感させられています。
そして、生理中の身体の痛み、イライラなど身心の状態の変化に本当に悩まれている方もいると思います。
こういった方は、早く状態が良くなってほしいと思いますが、先ほどお伝えした薬物療法の中で、この薬物療法ができない方も中にはいます。
EP配合剤を服用すると、まれなことではありますが血栓症になる可能性があります。ですので、過度に脂肪が多い肥満の方の場合、それだけでも血栓症のリスクが高いので、服用できないことがあります。
またお薬服用することで、時々不正出血が出ることがあります。この辺りはみなさん個人個人の身体の状態を見ないとはっきりとしたことはお伝えできませんが、すべての方に月経困難症の治療としてお薬を出すことができるとも限りません。
そういうことも踏まえても、みなさんにはより元気に幸せに過ごしていただきたいと思っていますので、月経困難症の疑いがあるのでは?と思っている方、生理中の身心の不調で悩んでいる方は、お近くのクリニックで一度で診察を受けていただきたいなと思います。
まとめ
今回お伝えしたのは、月経困難症という生理中にお腹の痛みや身体の不調などが出る病気についてでした。
月に必ず1回はくる生理。必要なこととはわかっていながらも、痛みや不調が強い方は、「生理なんかなくなればいいのに・・・」と心の底から思われていると思います。
ただ女性の身体にとって必要なことだからこそ、毎月生理はやってくるわけです。
毎月しんどい思いをされずに、できるだけ快適な毎日が過ごせるように、生理中の痛みや不調で悩んでいる方は、月経困難症という病気を知っていただきたいですし、早く治療していただきたいなと思います。
今回の内容が少しでも、みなさんのお役に立てると嬉しく思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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