40代以降の女性へ|女性ホルモン(エストロゲン)の大切さと付き合い方について

40代以降の女性へ|女性ホルモン(エストロゲン)の大切さと付き合い方について

40代に入り身体の変化を感じやすくなってきますよね。痛みや不調、更年期障害になる方もいると思います。

日本人女性の閉経年齢は、平均約50歳(正常範囲は45~56歳、全ての女性が閉経する年齢は59歳)と報告されています。

閉経するときを境に、閉経前の5年、閉経後の5年、このトータル10年間を更年期といい、個人差はありますが、身体に様々な不調が現れます。

この身体の不調や変化は、女性ホルモン(エストロゲン)と密接に関係しています。

今回は、40代以上の女性に女性ホルモンの大切さと付き合い方についてお伝えしていきたいと思います。

こちらの記事も参考にしていただければと思います。

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女性ホルモン(エストロゲン)とは?

エストロゲンとは?

みなさんに広く知られる女性ホルモン。このホルモンの名前は、エストロゲンといいます。

よく耳にする分、「女性ホルモンってこういう効果があるんだよね!」と何かご自身でもイメージがあるかもしれません。

実際に女性ホルモン(エストロゲン)はどのような存在なのでしょうか?

女性ホルモンの働き

女性ホルモンにはさまざまな働きがありますが、主にこのような働きがあります。

  • 女性特有の身体を形成する
  • 基礎代謝を下げる
  • 自律神経のバランスの乱れを整える
  • 骨を強くする

それぞれを具体的に見ていきたいと思います。

女性特有の身体を形成する

女性らしい身体を形成するためには、エストロゲンが必要となります。

また、卵巣の中で卵胞とよばれる、女性側の赤ちゃんのもとが育ってくるとエストロゲンが分泌されはじめます。

すると、エストロゲンの働きで子宮の内側を覆う子宮内膜が厚くなります。

受精し、妊娠するための過程でこの子宮内膜が厚くなることで受精の準備をします。

このように女性特有の身体の変化を起こすためにも、エストロゲンの存在が重要になります。

基礎代謝を下げる

エストロゲンには、血管を拡張し、熱を発散する作用もあります。そのため、女性が生理前後に体温の上下動が起こるのはこのエストロゲンの存在があります。

排卵直前では特に体温が下がると言われています。

自律神経のバランスの乱れを整える

現代人は特にストレス社会の中で暮らしているため、自律神経のバランスが乱れてしまっている方が多くいます。

自律神経のバランスが崩れてしまうと、さまざま病気になる可能性が高まりますし、身体の痛み、不調などにもつながってしまいます。

エストロゲンは、この自律神経のバランスを整える役割もあります。

骨を強くする

エストロゲンには、カルシウムの吸収を高める役割があります。そのため、骨を強くし、丈夫な身体にする役割があります。

また骨とは別ですが、アルツハイマー病になる方は、このエストロゲンの減少が関係しているのではないかと言われています。

詳細については、まだ解明されていないこともありますが、エストロゲンにはこういった骨を強くする、病気を防ぐという働きもあります。

 

見た目が若くても卵巣年齢は実年齢と同じ

年齢

現在、40代以降の「美魔女」と呼ばれる年齢を超越した若さと美貌を持つ女性がいます。本当にきれいですよね。

ただ、年齢と差をつくれる見た目とは違い、卵巣の年齢は惑わすことはできず、実年齢と同じです。

また、昔と比べて平均閉経年齢が延びているわけでもなく、平均閉経年齢も約50歳と変化はありません。妊娠力はむしろ昔の明治、大正、昭和初期の女性の方が高かったと思われます。

私の亡くなった明治生まれの祖母は8人出産しており、末子(私の叔父)を48歳で出産しています。

長男(私の伯父)が祖母46歳の時に第一子(私の従兄)を授かっていますので、なんだかややこしいけど私の従兄からみると年下の叔父さん!ということになりますね。

 

更年期に特有の病気に注意

更年期はだれでも迎える閉経をはさんだ10年間です。
この時期に現れる様々な症状の中で他の病気に伴わないものを更年期症状と呼び、その中でも症状が重く日常生活に支障をきたすものを更年期障害と呼びます。更年期になると女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が低下するとともに、年齢に伴う身体の変化、精神・心理的要因、社会的環境因子が複合的に影響することで症状が現れると考えられています。

更年期障害の症状は大きく分けて3つに分類されます。

①自律神経失調症状:ほてり、のぼせ、発汗、冷え、疲れやすい、肩こり、頭痛、めまい、動悸、息苦しさ、胸の痛み

②精神症状:不安、憂うつ、不眠、イライラ感、怒りやすい

③その他の症状:関節痛、腰痛、吐き気、食欲不振、皮膚の乾燥やかゆみ、性交時痛、尿失禁など

更年期の女性の3人に1人は更年期障害の治療が必要とも言われています。

更年期障害以外にも、更年期にかかりやすい病気があります。過多月経(生理の量が多い)、月経困難症(生理痛)、子宮内膜症子宮腺筋症子宮内膜増殖症(子宮体癌のリスクの高いものもある!)など月経にまつわる病気にかかりやすくなったり、望まない妊娠のリスクもあります。

 

意外に多い!40代以降の望まない妊娠

 人口動態統計、衛生行政報告例(平成25年)によると、40代後半女性(45~49歳)の妊娠総数(出生数+中絶数)に占める割合は54%と10代女性の次に高くなっています。

完全に閉経するまでは妊娠の可能性は十分あるということです。

40代以降の患者さんで、月経のトラブル(月経不順や過多月経、不正出血など)の相談に来院されて妊娠が発覚し、

「更年期だからこういうことはよくあることかと思って・・・」、

「閉経が近づいているから妊娠の可能性はないかと思って・・・」、

「ホルモンバランンスが乱れているだけかなぁと思って・・・」、

とおっしゃられる方は少なくありません。

病気や望まない妊娠に気づかない、気づきたくないという正常バイアス(normalcy bias)が働き、婦人科への受診が遅れ病気が進行してたり、妊娠発覚が遅れたりすることはとても残念です。

更年期になりやすい病気もあるので、今までにない身体の変化を気にかけて欲しいと思います。

 

40代以降の女性ホルモン製剤の選択肢

1.月経トラブルの治療薬

  1. 月経量の減少とそれに伴う貧血の改善
  2. 月経困難症(生理痛)の改善
  3. 子宮体癌の予防

という効果が期待できます。

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)

LEPとはlow dose Estorgen Progestinの略で後述する低用量の経口避妊薬(ピル)と同様の2種類の女性ホルモンを含有する内服薬です。

ルナベルLD配合錠、ルナベルULD配合錠、ヤーズ配合錠、ヤーズフレックス配合錠の4種類があります。

子宮内膜の増殖を抑制しプロスタグランジン濃度が最も低い状態を保つことで、月経にともなう様々なトラブルが改善されます。

ミレーナ®52㎎ ( LNG-IUS:levonorgestrel-releasing system )

ミレーナ®52㎎ ( LNG-IUS )は子宮の中で作用するお薬です。

黄体ホルモンであるプロゲスチン製剤(レボノルゲストレル:LNG)の子宮内留置型のdrug delivery systemのことです。子宮内に、約20μℊ/日のレボノルゲストレルを持続して約5年間放出する子宮内システムIUS( Intra Uterine System)です。

ミレーナの本体はT字型をしていて、柔らかいプラステチックでできています。T字型の縦の部分から黄体ホルモン(レボノルゲストレル)がゆっくり持続的に放出され一度装着すれば最長で5年間効果が持続します。

ミレーナから放出される黄体ホルモン(レボノルゲストレル)は子宮内膜の増殖を抑制します。

2.避妊薬

低用量経口避妊薬(OC)

OCとはOral Contraceptivesの略でエストロゲンとプロゲスチンの2種類の女性ホルモンを含んだお薬です。

日本国内で発売されているOCには

1相性のマーベロン、ファボワール(ともに同成分)、

3相性のトリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ(ともに同成分)やシンフェーズがあります。

ミレーナ®52㎎ ( LNG-IUS )

低用量経口避妊薬(OC)の高い避妊効果と、子宮内避妊用具(IUD:Intrauterine Device) の長期の避妊という二つの特徴を併せ持っており、最も高い避妊効果を示します。

避妊の作用機序は主に2つあります。

・子宮内膜に作用して内膜が薄くなり、受精卵の着床(妊娠の成立)を妨げます。

・子宮頚管(子宮の入り口)の粘液の性状を変化させ、精子が膣の中から子宮内へ侵入するのを妨げます。

 

40代以降、第一選択になる!?女性ホルモン製剤はどっち?

使用適応を満たせば、ミレーナ®52㎎ ( LNG-IUS )が第一選択になるかと思われます。

一般的に心筋梗塞等の心血管系疾患や静脈血栓塞栓症(VTE:Venous thromboembolism) 、動脈血栓塞栓症(ATE:arterial thromboembolisim)のリスクは加齢とともに上昇することが知られています。

静脈血栓症は低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)や低用量経口避妊薬(OC)に含有されているエストロゲンの作用によります。

その発症頻度は

OC服用者で3~9人/1万婦人/年

OC非服用者で1~5人/1万人/年

妊婦で5~20人/1万人/年、

産褥婦(妊娠12週間)で40~65人/1万人/年

と報告されています。

OC服用者より妊婦や産褥婦の方がかなり多いことがわかります。

40代の女性でも心血管系のリスクがなく喫煙していなければ、LEPやOC服用により心血管系のリスクは有意に増大しないと考えられ、服用の有益性に着目されるようになりました。

しかし、40代で軽症の高血圧症(妊娠中の高血圧症候群)、肥満、糖尿病および耐糖能異常、脂質異常がある方は、服用をより慎重に決定する必要があります。これらの症状がLEPやOCによる動静脈血栓症のリスクを上げる要因になることがあるからです。

ミレーナはエストロゲンの配合されていない黄体ホルモン(プロゲステロン)単剤のため、血栓症のリスクの心配がありません!

このようにLEPやOCを使用しにくい症例や加齢とともに上昇する血栓症のリスクが心配な方にはミレーナがおすすめです。

 

まとめ

  • 見た目が若くても卵巣年齢は実年齢と同じ
  • 更年期に特有な病気がある
    更年期障害、過多月経(生理の量が多い)、月経困難症(生理痛)、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症(子宮体癌のリスクの高いものもあり)
  • 閉経するまでは確実な避妊が必要
  • 40代以降の女性ホルモン製剤の選択肢は、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)等さまざまな薬がある

このような内容でお送りしていきました。

今回の内容が、40代以降の女性の参考になればうれしく思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ゆかりレディースクリニック

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